あるとき、自分が設計したシステムで故障が発生し、
大手スーパーマーケットからクレームを受けた。
大急ぎで現場に駆けつけて調べてみると、
夜間に作業した工事スタッフが誤って通信ケーブルを切断したことが判明。
自分の作ったシステムが原因ではないとわかった私は胸をなで下ろし、
スーパーの設備担当者にこう伝えた。
「今後はケーブルを切断しないよう、スタッフに注意してください」。
すると担当者は怒りを露わにした。
「ふざけるな! あなたの作ったものに合わせて仕事ができるか。
うちの商売に合わせてシステムを作るのがあなたの仕事だろう!」。
目が覚めるような思いがした。
システムを開発しているときは、
ケーブルが切断されることなどほとんど想定していなかった。
しかし現場では、
「たとえ切断されたとしても店の業務に支障が生じないシステム」こそを求めていたのだ。
私はお客様の気持ちを理解せず、
彼らが本当に求めているものを提案できていなかった。
その後、
ケーブルが断線した際にはバックアップの回線に切り替わるよう、
システムを設計し直した。
これがやがて特許を得る技術にまで発展する。
現場に足を運んだからこそ生まれた
ビジネスチャンスだった。
受け止め方ひとつで、雲泥の差。
転んでもただでは起きない人だから、
成し得た心構え。